米国株と確定申告。総合課税と申告分離課税どちらがお得?外国税額控除、損益通算など知ると得する事が盛り沢山!
確定申告とは
確定申告とは、所得にかかる税金(所得税及び復興特別所得税)の額を計算し、納めすぎた税金が還付金として手元に戻ってくる申請の事です。
所得の計算期間は1月1日から12月31日の1年間です。
確定申告書や決算書などの必要書類をそろえて、翌年の2月16日から3月15日(土日の場合は翌月曜日)までに税務署に申請します。
確定申告と年末調整との違い
社会人であれば毎年12月頭頃に年末調整を申請していると思います。
確定申告と年末調整では何が違うのでしょうか?
それはズバリ「給与から天引きされている所得税のみの過不足を計算して調整している」点です。
毎月給与から天引きされている所得税はあくまでも概算で、生命保険料控除などが反映されていません。
年末調整で正しい所得税額を算出し、足りない人からは追加徴収、支払い過ぎている人には還付が行われます。
確定申告で申請できる事
確定申告で申請できる事は何ができるでしょうか。
ざっくり言うと以下の事ができます。
- 医療費控除
- 外国税額控除
- 損益通算と繰越控除
- 配当控除
医療費控除
医療費控除とは、10万円以上の医療費を年間で支払った場合に、納めた税金の一部が戻ってくるというものです。
これには生計を一緒にする家族の分を合算できます。
また、医療とは別にお薬代や交通費も合算できます。
外国税額控除
外国税額控除とは、米国内で源泉徴収された税金を控除してもらう制度です。
また、源泉徴収税は配当金にのみかかり、売買益にはかかりません。
しかし、配当金は米国内で10%引かれた後に、日本で20.315%が引かれます。
日米間の租税条約により、二重課税をしないという取り決めをしていますが、特定口座(源泉徴収あり)にしていると、自動的に課税されてしまい二重課税になってしまいます。
この二重課税分(米国内の10%)を控除してもらうのが外国税額控除です。
ただし、最大10%控除であり、全額控除されない場合があります。(詳しくは後述します)
また、NISA口座では外国税額控除を申請することができません。
これはNISA口座内での配当金や売買益は存在しないことになっているからです。
つまり、譲渡益税の20.315%が配当金と売買益から引かれません(これを非課税と言います)が、現地源泉徴収税を取り返すことができません。
米国株の配当金には、現地の源泉徴収税がかかります。
現地とはその株式が所属している国になります。
つまりカナダのADR銘柄にはカナダの源泉徴収税がかかります。
源泉徴収税率は各国毎に大きく異なります。
国名 | 現地源泉徴収税率 |
日本※ | 20.315% |
アメリカ | 10% |
イギリス | 0% |
オーストラリア | 0% |
フランス | 0% |
スイス | 0.2% |
カナダ | 15% |
※日本では譲渡益税と言います。
例えば、米国株Aの配当金が100米ドルあった場合、
まず、現地源泉徴収税率(アメリカの場合10%)が引かれます。
100米ドル×(100-10)÷100=90米ドル
ここから更に日本の譲渡益税(20.315%)が引かれます。
90米ドル×(100-20.315)÷100=71.7165米ドル
なんと!100米ドルの手取り額が71.7165米ドルまで減ってしまいます!
この最初の10米ドルを取り返す可能性があるのが外国税額控除です。
外国税額控除は所得税額から外国での所得税相当額を控除します。
しかし、外国税額控除には限度額があり、全額が還付されるとは限りません。
外国税額控除の限度額の計算は以下のとおりです。
外国税額控除の限度額=その年分の所得税の額×その年分の国外所得総額÷その年分の所得総額
所得税額から控除しきれない場合、道府県民税額、次に市町村民税の順に住民税から控除します。
道府県民税=外国税額控除の限度額×12%
市町村民税=外国税額控除の限度額×18%
外国税額控除は翌年以降3年間の繰越が認められています。
外国税額が限度額を下回った場合は「控除余裕額」として、翌年以降3年の間に限度額を上回った場合に使用することができます。
損益通算と繰越控除
株の損益通算はその年の1月から12月です。
「含み益」ではなく、「実現損益」で考えます。
例えば、買値はそれぞれ100万円の4銘柄を持っているとします。
- A銘柄:100万円
- B銘柄:100万円
- C銘柄:100万円
- D銘柄:100万円
その後に相場が変わって、
- A銘柄:150万円
- B銘柄:40万円
- C銘柄:130万円
- D銘柄:80万円
になったとします。
ここでは分かり易くするために手数料は除外します。
A銘柄とB銘柄を決済し損益を確定する事を「実現損益」といいます。
A銘柄では50万円の利益が出ており、B銘柄では60万円の損失が出ています。
もし、確定申告をしなかった場合は、A銘柄の利益50万円に対する譲渡益税(約20%)分の約10万円が税金として取られてしまいます。
この約10万円の税金を回避するのがB銘柄の損失、つまり「損益通算」です。
なお、C銘柄は売らなければ「含み益」となり、D銘柄は売らなければ「含み損」となり利益が確定しませんので課税対象になりません。
課税対象はあくまで「実現損益」を対象にしています。
配当金を損益通算できるのか?
配当金は振込の時点で現金化されているので「実現損益」になります。
従って、売買損益と配当金を通算することは可能です。
例えば上記の例ですと、B銘柄の損失が60万円で、A銘柄の利益が50万円なので、その差10万円までの配当金が非課税になります。
繰越控除について
売買益の損失は3年間繰り越すことができます。
これを繰越控除といいます。
つまり、3年間相殺できるということです。
繰越をするならば毎年確定申告をしなくてはいけません。
また、上記の例ですと、3年間で10万円を超える利益が出た時点で、繰越控除は終わってしまいます。
その後の利益は課税対象になります。
配当控除
そもそも配当金とは企業が出した利益の分配です。
企業も利益に対して法人税を払っていますので、分配である配当金からも税金を徴収すると二重課税になってしまいます。
その調整のために配当控除という所得税や住民税から一定額を還元してくれる制度があります。
ただし、外国の企業は日本に法人税を納めていませんので外国株式の配当金は除外されます。
更に損益通算するなら使用できません。
これは配当控除は総合課税に所属しており、損益通算は申告分離課税に所属しているためです。
配当控除を行って得になるのは以下に当てはまる人になります。
ただし、逆に納税額が増えることがあるので、確定申告の前に最寄の税務署に問い合わせておいた方が良いです。
- 株式の損益通算をしない人。
- 配当金を含めた課税所得金額が695万円以下の人
- 配偶者控除などの適用を受けている人で、配当以外に所得がなく(専業主婦など)、株の利益や配当所得などの合計が38万円以下の人
計算式は以下になります。
(1) その年分の課税総所得金額等が1千万円以下の場合
配当控除の額=イ+ロ
- イ 剰余金の配当等に係る配当所得(特定株式投資信託の収益の分配に係る配当所得を含みます。以下同じです。)の金額×10%
- ロ 証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得(特定株式投資信託の収益の分配に係る配当所得を除きます。以下同じです。)の金額×5%
(証券投資信託の収益の分配に係る配当所得のうち、特定外貨建等証券投資信託以外の外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額については、2.5%)
(注)「課税総所得金額等」とは、課税総所得金額、土地等に係る課税事業所得等の金額(平成10年1月1日から平成32年(2020年)3月31日までの間は適用なし)、課税長期(短期)譲渡所得の金額、上場株式等に係る課税配当所得の金額、株式等に係る課税譲渡所得等の金額及び先物取引に係る課税雑所得等の金額の合計額をいいます(以下同じです)。
(2) その年分の課税総所得金額等が1千万円を超え、かつ、課税総所得金額等から証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額を差し引いた金額が1千万円以下の場合
次のイからハの合計額
- イ 剰余金の配当等に係る配当所得の金額×10%
- ロ (証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額のうち、課税総所得金額等から1千万円を差し引いた金額(A)に相当する部分の金額)×2.5%
- ハ 証券投資信託の収益の分配に係る剰余金の配当等に係る配当所得の金額のうち(A)を超える部分の金額×5%
- (注) 証券投資信託の収益の分配に係る配当所得のうちに特定外貨建等証券投資信託以外の外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当所得がある場合には、その金額に係る控除率は、2.5%が1.25%、5%が2.5%となります。
(3) 課税総所得金額等から証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額を差し引いた金額が1千万円を超える場合((4)に該当する場合を除きます。)
次のイからハの合計額
- イ (剰余金の配当等に係る配当所得の金額のうち、課税総所得金額等から1千万円と証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額の合計額を差し引いた金額(A)に相当する部分の金額)×5%
- ロ 剰余金の配当等に係る配当所得のうち、(A)を超える部分の金額×10%
- ハ 証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額×2.5%
(証券投資信託の収益の分配に係る配当所得のうち、特定外貨建等証券投資信託以外の外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当所得については、1.25%)
(4) 課税総所得金額等から剰余金の配当等に係る配当所得の金額と証券投資信託の収益の分配に係る配当所得の金額の合計額を差し引いた金額が1千万円を超える場合
次のイとロの合計額
- イ 剰余金の配当等に係る配当所得の金額×5%
- ロ 証券投資信託の収益の分配金に係る配当所得の金額×2.5%
(証券投資信託の収益の分配に係る配当所得のうち、特定外貨建等証券投資信託以外の外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当所得については、1.25%)
総合課税と申告分離課税
上場株式等の配当等については、総合課税か申告分離課税を選択することができます。
下図の通り損益通算は申告分離課税となります。
また、配当控除は総合課税になります。
総合課税と申告分離課税は二択になっており、いずれか一方しか選択できませんので、損益通算と配当控除は同時に申請できません。。
上場株式等の配当等の課税関係は、以下の図のとおりとなります。
(出典は国税庁サイト)
上場株式等の配当等に関する課税関係の主な部分を整理すると、次のとおりです。
確定申告をする | 確定申告をしない (確定申告不要制度適用) |
||
---|---|---|---|
総合課税を選択 | 申告分離課税を選択 | ||
借入金利子の控除 | あり | あり | なし |
税率 | 累進税率 | ||
所得税 15.315% 地方税 5% | |||
配当控除 | あり(※1) | なし | なし |
上場株式等の譲渡損失との損益通算 | なし | あり | なし |
扶養控除等の判定 | 合計所得金額に含まれる | 合計所得金額に含まれる(※2) | 合計所得金額に含まれない |
(注) 平成25年から平成49年(2037年)までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納税することになります。
※1 外国法人から受ける配当等、特定目的信託に係る配当等、特定目的会社から支払を受ける配当等、投資法人から支払を受ける配当等、特定受益証券発行信託の収益の分配に係る配当等などは、配当控除の対象となりません。
※2 上場株式等に係る譲渡損失と申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得との損益通算の特例の適用を受けている場合にはその適用後の金額、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用を受けている場合にはその適用前の金額になります。
総合課税と申告分離課税はどちらがお得か?
総合課税と申告分離課税はどちらがお得か?という問いに対する回答は
「個人の状況による。」
という回答になります!(ドヤぁ!)
これだけでは何ですので、判断の基準を記述しておきます。
「総合課税」で申告すると得をする人
- 株式の損益通算をしない人。
- 配当金を含めた課税所得金額が695万円以下の人
- 配偶者控除などの適用を受けている人で、配当以外に所得がなく(専業主婦など)、株の利益や配当所得などの合計が38万円以下の人
<メリット>
- 配当控除ができる。
<デメリット>
- 損益通算ができない。
- 累進課税(税率15%~55%)になるので確定申告しない方が得な人がいる。
「申告分離課税」で申告すると得をする人
- 株式の損益通算をする人。
- 配当金を含めた課税所得金額が695万円超の人
- 配偶者控除などの適用を受けている人で、配当以外に所得がなく(専業主婦など)、株の利益や配当所得などの合計が38万円超の人
<メリット>
- 損益通算ができる。
<デメリット>
- 配当控除ができない。
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使ってみましたが、かなり使い勝手が良かったです。
今年は初めて外国税額控除をしたのですが、思ったよりサクサク作成できました。
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